伝説の大道芸人・ギリヤーク尼ヶ崎さんのドキュメンタリーが先日放送されました。

録画してたのをようやく見たので、その感想です。

 

画像元:もっとNHKドキュメンタリー

ギリヤーク尼ヶ崎・プロフィール

本名 尼ヶ崎 勝見

生年月日 1930年8月18日(86歳)

出生地 北海道函館市

職業 舞踏家・俳優

芸名の「ギリヤーク」は、樺太の少数民族「ギリヤーク」にご自身の風貌が似ていることからついたそうです。

今回の番組でも紹介されていましたが、寺山修司「さらば箱舟」、伊丹十三「マルサの女」などの映画にも出演されています(ウィキペディアを見ると、)石井聰亙監督の「爆裂都市 BURST CITY」にも出てますね)

 

ちなみに、ハートネットTVはNHKが製作する以下のようなドキュメント番組です。

ハートネットTVは様々な「生きづらさ」を抱える人たちのための番組です。テーマは、貧困・虐待・自殺・うつ・依存症・発達障害・認知症・がん・難病・介護・リハビリ・障害・LGBTなど様々。ホームページも情報満載!みなさんがつながりあえるよう情報交換の場も設けています。◆ハートネットHP http://www.nhk.or.jp/heart-net ◆ツイッター・フェイスブックでの情報発信もしています。

※「もっとNHKドキュメンタリー」より引用

鬼の踊り

番組では、これまでのギリヤーク尼ヶ崎さんの公演の映像もいくつか流されましたが、とにかく激しい。

じょんがら節にあわせて、飛んだり、跳ねたり、水をかぶったり、危機迫る舞踏は、通りすがりの人を白眼視させる一方、見ている観客の言葉を奪い、涙を流させもする独特のものでした。

 

そのギリヤーク尼ヶ崎さんが、齢80を超えても元気にやってる姿を映し出されるかと思いきや、さにあらず。

冒頭から弱りきったギリヤーク尼ヶ崎さんが映し出されます。

 

腰がひんまがり、一人ではまともに歩くこともできないような状態に加え、勝手に手が震え、止まらなくて食事もままならないみたいな大変なことになってました。

(手の振るえに関して、いろんな大きな病院に行ったけど「原因がわからないの」って言ってましたが、普通にパーキンソン病とちゃいますのん?と思ってみてたら、やっぱりそうだったみたいですね)

 

38年間続けてきた新宿の舞台

それじゃ、どんどん弱っていく伝説の大道芸人の姿をただただ映し出し、過去を回顧させるのかというとやっぱりそうでもなくて、ギリヤーク尼ヶ崎さんは毎年10月10日に行われ、自身が38年間で出演し続けている新宿の舞台に今年も立つつもりで、それが成就するかどうかを追うドキュメントになっていたのでした。

弟はるさんとの対峙

そんなギリヤーク尼ヶ崎さんを支えるのが、市営住宅でいっしょに暮らす弟のはるさん。

「できるだけのことはしてやりたい」と献身的に兄をサポートするはるさんですが、時にケンカをしたり、なかなか一筋縄ではいきません。

 

新宿の舞台に立つことにこだわり続けるギリヤーク尼ヶ崎さんに、はるさんが「体が動かなくなっても踊ろうとする理由はなんなの」と問います。

人は金のため、名誉のためとか、いろいろ理由はあるけど、兄貴は何なの?と。

 

「すぐに出てこないな」ギリヤーク尼ヶ崎さんがそう答えたあと、二人は対峙したまま、しばし沈黙しあいます。

 

その後、再びはるさんが口を開きます。

「なんでそういう状態で新宿に行って踊りたいのかなって」

 

ギリヤーク尼ヶ崎さんが答えます。

「弟の今言った質問ってのはね、やったことのない人間のいいぐさなの」と。

続けて、そんなの語れた小説家になってどんどん本も売れてるといいますが、つまり、そんなこと聞かれても一言では答えられない、いわく言いがたいものであると。

「やった人間からではなく、やらない人間だったらいくらでもかっこうのいいことしゃべるわ」とギリヤーク尼ヶ崎さん。

 

そこでまた無言で見つめあう二人。

しばらくして、「ごめん」といって弟のはるさんは隣の部屋に行きます。

 

これはどちらも正しいというか、一概にどっちがおかしいとか言えない感じのことですが、大道芸人としての気概と誇りをもってこれまで踊り続けていたギリヤーク尼ヶ崎さんの矜持とプロ根性もわかるような気もするし、そんな兄貴を高齢になってから介護することになった弟のはるさんが、第三者的に見てまったくもって踊れそうな体じゃないのに、周りに迷惑かけてまでなんで踊ろうとするんだ、っていう思いもわからなくはないと思います。

新宿の舞台に立ったギリアークさん

結論からいうと、ギリヤーク尼ヶ崎さんは新宿の舞台に立ち、芸を披露します。

参加するにしても、仲間に車椅子を押してもらって、登場するだけとかにしようという提案もあったりしましたが、ギリヤーク尼ヶ崎さんはパフォーマンスを行います。

 

法被とった赤褌一枚の姿にガリガリな様子が、往年のジャンアント馬場みたいでしたが、それまでのどんどん弱っていく過程を見せられたものとして驚くくらい元気になって動き回ります。

 

それを高架の歩道から楽しそうに見つめている、はるさんの表情がよかったですね。

いわく、「不思議っちゅうか、自分の生きたいことを貫くっちゅうものを見してもらったね」。

舞台を終えて

新宿公演が終わったあと、数日後にスタッフがご自宅にうかがうと、うれしそうな表情で出てきたギリヤーク尼ヶ崎さん。

久しぶりに大道芸人として舞台に立ち、投げ銭をもらった、その感動と喜びをとつとつと語るギリヤーク尼ヶ崎さんの表情がほんとによくて、車椅子に座って手を震わせていたの嘘のように元気な姿にも見えました。

 

予断ですが、ギリヤークさんとはるさんは10歳年の離れた兄弟ですが、はるさんがギリヤークさんを呼ぶときに「おい」といったり、ギリヤークさんが「はるさん」と呼んでたり、兄弟の関係性が逆転してるのがちょっと面白かったです。

 

最後の最後に、ギリヤーク尼ヶ崎さんが改まった感じにはるさんに感謝します。

「普通のことしてるだけ」とそっけないはるさんに、ギリヤーク尼ヶ崎さんがいいます。

「その普通がありがたい」