6月10日(土)に神戸女学院大学で行われた「人生に、文学を」をオープン講座に参加してきました。出席したのは高橋源一郎「名作の読み方」。そのレポートです。

 

画像元:人生に、文学を

 「人生に、文学を」オープン講座・高橋源一郎「名作の読み方」

「人生に、文学を」とは?

公益財団法人日本文学振興会が文藝春秋とともに、「人生に、文学を」というメッセージのもと、あらためて「本を読むこと」、「文学に親しむこと」の素晴らしさを、広く世に訴えるためにスタートしたプロジェクト。

その一環として、全国各地で作家などによるオープン講座を開講されているようです。

【詳しくはこちら】

https://www.jinsei-bungaku.jp/about.html

高橋源一郎「名作の読み方」

課題図書は夏目漱石の『坊ちゃん』と『こころ』。

ということで久しぶりに読み返してみました。

 

時間があんましなくて、『坊ちゃん』読了後、『こころ』は途中までになっちゃいましたが、やっぱりというか、漱石はおもしろかったです。

旧佐幕派の出身者が好意的に描かれる?!

講座ではメインが『こころ』だったんで、『坊ちゃん』は端折りぎみでしたが、作品上でいい人物として描かれるのはすべて旧佐幕派の出身者で、その逆の倒幕派は悪く描かれる、と。

例えば、主人公の坊ちゃんは「旗本の家の出」であり、清は「明治維新で落ちぶれた身分のある家の出」。山嵐は佐幕派の象徴的な藩である会津出身、といった感じです。

 

ちなみに、このルールは漱石の他の作品でも適応されてるみたいです。

(例えば、こころの先生の出身地が長岡とか)

『こころ』のKは誰か?

で、『こころ』の話ですが、いろんなお話がありましたが、キャッチーなところではこの話題ではないでしょうか。

だいたい読者は読み飛ばしてしまいますが、「下 先生と遺書」の中で、丁寧に出生やその家庭環境について書かれた箇所があります。

 

高橋さんのご指摘は次の通り。

① 「K」は坊主の息子です。

② 「K」は養子になり、姓が急に変わって友人を驚かした。

確かに、医者に養子にいったことで姓が急に変わって驚いたエピソードというのはかなり具体的なんですけど、小説の本質的な部分とそんな関係ある?みたいなつっこみもあるわけで、そこにKのモデルのヒントが隠されていると高橋先生。で、

① 頭文字「K」を持ち、

② 漱石を「先生」と慕い、

③ けれども、漱石に手ひどく裏切られ、

④ 坊主の息子として生まれ、

⑤ 幼い頃養子になり、姓が急に変わって友人を驚かしたことがあった、その男

こそがKのモデルであるはずで、漱石の身辺で上記に該当する人物を探してみると、一人だけ当てはまる人物がいたそうです・・・そう、石川啄木

 

つーか、石川啄木ってイニシャル「I」もしくは「T」ですやん。

ってつっこみは当然のように発生するんですけど、説明をはしょりますが戸籍上は工藤一(くどうはじめ)というそうです。

 

んで、けれども、漱石に手ひどく裏切られ」というところについては、啄木は大逆事件の評論を漱石に依頼(?)されるが、書き上げた評論は漱石は最終的に朝日新聞に掲載しなかった(高橋さんいわく「ひよった」)。

その直後に啄木は「朝日歌壇」の選者となっていますが、それはせめてもの罪滅ぼしの処置だと。

 

ちなみに、時系列で書くと、

【1910年5月】 

各地で多数の社会主義者,無政府主義者が明治天皇暗殺を計画したとの理由で検挙される(翌年、26名の被告が死刑。いわゆる大逆事件)

【1910年6月】

啄木が評論「所謂今度の事」を執筆。

 

【1910年7月1日】

社用も兼ねて、啄木が漱石を見舞う(僧籍は直前の6月、胃潰瘍で入院している)。

 

【1910年8月】

啄木が評論「時代閉塞の現状」を執筆。

 

【1910年9月】

『朝日新聞』紙上に「朝日歌壇」が作られ、啄木がその選者となる。

とまあ、だいたいこんな感じです。

『日本文学盛衰史』を再読してみよう

で、実はこの話、ご本人もおっしゃっていましたが、10年以上前に出版されている『日本文学盛衰史』に書かれています。

 

高橋源一郎が同小説内で漱石の「修善寺の大患」について書こうとしたら、同じ病気で本人も死にかける(原宿の大患)というところはよく覚えてたけど、Kのくだりはすっかり忘れてた。

小説をたくさん読んできましたが、けっこう中身を忘れてしまってて、もうちょいしっかりしようとか思ってたところへ、もう10年以上くらい前の話だとは思うけど、小島信夫が「どんどん忘れていけばいい」みたいなことを書いているの読んで、そうか、どんどん忘れて、必要だったらまた読んで、んでまたどんどん忘れたらいいかとか思って、全然きにしてかなったけど、もうちょいしっかりしようと思います。

 

で、『日本文学盛衰史』を手にとってみたら、たしかに書かれていました。

今回の記事作成にあたり、引用もさせてもらいました。時間できたときに再読してみます。
 

まとめ

いきなり「まとめ」に飛びましたが、最後にちょこっと登壇された内田樹さんのこととか、まだ書こうと思ってたことはあるのですが、疲れたので今回はこのへんで。

 

ちなみに、高橋さんは大好きな作家さんの一人で、出ている本はだいたい拝読されていただいています。

今回も同イベントを東京の友人に教えられ、高橋源一郎のやつ面白そう!と思って応募したら当選して、参加するという経緯でした(その直後に行われた内田さんのもおもしろそうでしたが、参加できるのはどっちかひとつだけみたいでした)。

 

高橋さんの講座はやっぱおもしろいですね。

学生さんうらやましい。