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阪神・金本監督がドラフトで佐々木千隼を1位指名しなかった理由とは?

2016年のドラフトで阪神タイガースは、当初ドラ1位有力とされていた佐々木千隼投手(桜美林大学)ではなく、大山悠輔選手(白鴎大)を指名しました。はたして、そのドラフト戦略は成功だったのでしょうか。

(Photo:Kyodo)




大山悠輔選手のプロフィール

生年月日: 1994年12月19日
出身:茨城県
身長:181cm
体重:84㎏
投球打席:右投げ右打ち
出身大学:白鴎大学

 

つくば秀英高時代は主将で4番を務め、高校通算30本塁打を記録。

投手としても140キロを超える直球を投げていた。

白鴎大では野手に専念し、1年春から三塁手のスタメンとなり、ベストナインに選出される活躍を見せる。

2年秋には最多打点のタイトルを獲得、4年春は、関甲新学生リーグ新記録となる8本塁打を放ち、大学日本代表入り。日米大学選手権でも日本の主軸を任されるまでに成長する。

佐々木千隼投手プロフィール

生年月日: 1994年06月08日
出身:東京都
身長:182cm
体重:85㎏
投球打席:右投げ右打ち
出身大学:桜美林大学

日野高校出身。高校時代もエースだったが、通算30本以上のホームランを放っている強打者でもあった。

桜美林大学に進学し、1年次からリーグ戦に登板。3年春からエースとして活躍する。

4年春の首都大学リーグでは、67イニングを投げて自責点は2、防御率0.27という驚異的な成績を残す。

そして秋までに53回連続0封を記録した(リーグタイ記録)。

武器はスリークォーターから繰り出される153㌔直球とスライダー、シンカー。大学通算24勝13完封。






佐々木→大山になった理由

スポーツ紙や週刊誌の情報をまとめると、金本監督は、一番飛ばす打者=長距離砲を獲りたかった。

佐々木を1位でいって2位で大山を獲りにいった場合、2順目はウェーバー制になるので、指名順が6番目となる阪神は100%大山を獲れない可能性がある(他球団が指名するかもとの情報があったそうです)。そのリスクを避けるため、1位でいった。

 

この話には裏事情もあったようで、2015年のドラフトでスカウト陣は今永昇太(DeNA)を押したそうですが、金本監督がそれをひっくり返して、高山俊選手を指名。

新人王を獲得する活躍をするわけですが、その経緯から金本監督は自分の目に自信を持ち、スカウト陣も反論できないという下地が出来上がっていたようです。

2017年阪神のドラフトは失敗?

正直今年の阪神のドラフトは失敗だったと思いますが、この意見も含め以降はあくまで個人的な意見だと思ってお読みください。

それと、大山選手がダメとか、そういった話ではなく、あくまでチーム方針としての視点から話を進めたいと思います。

 

まず、事前に阪神は佐々木投手のドラフト1位を公言していました。

それを土壇場で、金本監督の鶴の一声で大山選手に変えました。

その変遷はマスコミから伝わっている情報以外にソースはありませんが、その真偽はさておき、直前に人選が変わった事実は確かなことです。

 

例えばこれが、ある日の試合のスタメンオーダーの話で、練習を見た閃きから、とっさにその選手を先発に起用したとかいうのならまだわかります。

けど、ドラフトって現状のチーム状況を加味するのはもちろん、今後数年にわたってチームを担っていく選手の獲得をめざすわけで、言うまでもなく長期的な視点が必要です。

 

だからこそ、フロント、現場が一体となり、事前にドラフト戦略を練るのだと思いますが、それが直前で覆されるのもどうなのかなと・・・。

よくいえば柔軟性があるともいえますが、ドラフトのような球団が一体となって取り組み、長期的な視点が必要な仕事において、監督一人の意見であっさりと戦略がくつがえされるのが、果たしていい組織といえるのかという疑問もあります。

 

個人的には、ドラフト1位選手の選定という大きな仕事を直前でころっと変えてしまうのは、どう好意的に見ても大きな組織としてはありえないように思います。

「監督の思い切った決断」的に美談にされることもありますが、上でも書きましたが試合中の采配に関して最終的に監督の一存で判断するとかはありというか、まったくなんの問題もないと思いますが、やはり「組織のあり方」として今回のことはどうしても疑問を感じます。






投手は外国人で・・・

佐々木→大山にいった経緯は上述しましたが、さらにその背景に「投手は外国人でなんとかなる」という考えも金本監督の中にあったようです。

つまり、今シーズンは貧打に泣かされ、その解消に和製大砲の育成が急務。もちろん、投手のテコ入れも大切だけど、それは外国人選手を取ってきたらなんとかなる、という考えだということです。

 

逆じゃないでしょうか。

過去のドラフトの結果を見たら一目瞭然ですが、ドラフト1位の即戦力投手と野手であれば、圧倒的に投手の方がいい成績を収めています。

もちろん、ドラ1でも活躍できなかった投手は少なくありませんし、野手でも今期の高山や、高橋由伸など1年目から活躍した選手はもちろんいますが、アマチュア時代の実績がより直結するのは投手です。

 

過去10年の新人王を見てみましょう。

【セ・リーグ】
2016年 高山俊(阪神)
2015年 山崎康晃(DeNA)
2014年 大瀬良大地(広島)
2013年 小川泰弘(ヤクルト)
2012年 野村祐輔(広島)
2011年 澤村拓一(巨人)
2010年 長野久義(巨人)
2009年 松本哲也(巨人)
2008年 山口鉄也(巨人)
2007年 上園啓史(阪神)

【パ・リーグ】
2016年 高梨裕稔(日本ハム)
2015年 有原航平(日本ハム)
2014年 石川歩(ロッテ)
2013年 則本昂大(楽天)
2012年 益田直也(ロッテ)
2011年 牧田和久(西武)
2010年 榊原諒(日本ハム)
2009年 摂津正(ソフトバンク)
2008年 小松聖(オリックス)
2007年 田中将大(楽天)

緑色で示したのが野手ですが、セ・リーグでは3名、パ・リーグにいたっては全員が投手で野手は0人です。

ちなみに、新人王には1年目の選手以外にも「前年までの出場が投手は30イニング以内、野手は60打席以内の選手」は対象となるほか、上記のリストがすべてドラフト1位の選手なわけでもありませんが、何がいいたいのかというと、圧倒的に投手の方が即戦力になりやすいということです。

 

そこであらためて「投手は外国人でなんとかなる」から野手をドラ1でという金本監督の意見について考えてみたいと思います。

 

まず外国人選手に関しては、投手も野手も主軸を担ってくれることを期待して球団は獲得をしてきます。

当然のように投手も野手も当たり外れがあるわけですが、その確率はどっちがどっちとはなかなかいえません。

 

一方、新人選手に関しては、圧倒的に投手の方が安定しています。

まして、今年は投手豊作の年といわれ、佐々木投手は一部では10年に一人ともいわれているくらいの逸材でした(その証拠に、一巡目の指名のくじが外れた全球団=5球団が佐々木投手を1位指名しています)。

ちなみに、阪神は現状で先発の柱であるメッセンジャーと、抑えのマテオの残留がきまってます。

「投手は外国人でなんとかなる」ということは、さらに先発投手の外国人を取りにいくのでしょうか・・・。

 

いずれにしても、誰がどれだけ活躍するのかは実際にやってみないとわかりませんが、複数の球団が指名してくるような逸材の投手を取り、今までがそうだったようにクリーンナップを打てるような野手を外国人で補強するというほうが、チーム戦略としてはよっぽど筋が通っていると思います。







野手が2年連続でドラフト1位

小見出しのとおりですが、このことも気になりました。

もちろん、チーム状況などを鑑みて、野手を2年連続でドラフト1位で獲得するといったことがあってもいいとは思うのですが、やはり野球の基本は投手でしょう。

 

これは素人のぼくが勝手にいっているだけではなく、野村克也、広岡達朗、落合博満といった名監督と呼ばれた人たちは、おしなべて投手を中心とした守備を重視しています。

結果論ではなく、昨年の高山選手はよかったと思うのですが(東京六大学の安打記録を更新するといった実績もすばらしかった)、昨年高山選手を指名しただけに、よけいに今年は即戦力投手にいってほしかった。一ファンとしての声ですが、チームの戦力的にもそうすべきじゃなかったのでしょうか。

 

「野手を育てる」と意気込む金本監督の熱意には期待しますが、打撃コーチのそれではなく、監督として大きな視野を持ったうえでの発言なのか多少不安もあります。

一ファンの戯言と、杞憂に終わってくれることを願っていますが、やはり不安です。

大山が活躍したらどうするねん、という意見について

どうもしないというか、むしろ大活躍してほしいです。

が、今回問題にしているのは、何度も書いていますが、球団という組織としての方針のあり方です。

5年後、10年後、大山選手が大活躍して、佐々木投手がいまいちの成績になったとして、それを見て「やっぱり金本は正解だった!」というのは結果論で、そういう単純な話ではないと思います。

 

阿佐田哲也の麻雀小説にありますが、プロの雀士はトータルで絶対に負けません。

ただ、この1回だけと短期で勝負をしたら、ツキのあった素人が勝つこともあるでしょう。

 

もう少し具体的にいうと、麻雀で相手がリーチにいった場合、状況にもよりますが、こっちがよっぽど大きな手でもテンパってるのでもない限り、捨て牌は慎重になるはずです。

それを自分の手だけを見て、ガンガンいらない牌を切っていったりしたら、遠からず振り込むことになるでしょう。

 

そこで上の話になるわけですが、無茶な捨て牌をしても1回だけの勝負ということであれば、たまたまその時は当たり牌を放銃することなく、こちらが勝つといったこともあると思いますが、長期的にそんなことをしていると、トータルでは絶対に負けてしまいます。

 

つまり、今回のドラフトの件が数年後振り返ったときに、結果的に成功だったとしても、だからといってこんな場当たり的に戦略を変えているようなことをしていると、トータルとしてチームは強くならないと思います。

 

なので、冒頭に「失敗だと思う」と私見を述べさせてもらったわけですが、今回のドラフトを見て、金本監督の方針がとても心配になりました。

ただ、そういったことに関係なく、これも繰り返しになりますが、大山選手、佐々木投手の両人は、ぜひプロ野球の世界でも大活躍してもらいたいと思います。