先日、伊東勤氏(54=ロッテ監督)、星野仙一氏(69=楽天副会長)、平松政次氏(69=野球解説者)の3氏の野球殿堂入りが発表されました。
あれ、伊東って2000本安打ってたかな? そんなこというと星野さんも200勝してたっけ?と思いましたが、そっちは名球会でした。
というわけで、名球会と野球殿堂の違いについてみてみます。
画像:スポニチ
名球会とは?
「日本プロ野球名球会」が正式名称で、その名球会の入会資格には明確な基準があります。
・通算200勝利以上
・通算250セーブ以上
・通算2000安打以上
上記の数字は、日米通算(NPB、MLBの合算)のものが採用されますが、「NPBでの記録をスタート地点とする」と定められています。
上記のルールがあるため、例えばメジャーリーグで2000本安打近いバッターが来日し、日本で数百本のヒットを打ち、日米通算で2000本安打を達成したとしても名球会には入れません。
ちなみに、広島東洋カープがドミニカ共和国につくった「カープアカデミー」出身で、広島でプレーした後にニューヨーク・ヤンキースをはじめメジャーリーグで大活躍したアルフォンソ・ソリアーノは上記の基準を満たしており、名球会の有資格者です(未入会。ちなみに、1997年に広島で2安打し、翌年から2014年までにメジャーリーグで2095本のヒットを打っています)
ソリアーノ以外では、落合博満が「入会資格を有する未入会者」で、名球会の会長だった金田正一との不仲説をはじめいろいろ言われていますが、ご本人が明言されていないので真相はわかっていません。
また、選手としての記録の部分での基準のほか、「昭和生まれ以降」であることが明記されています。この基準により、「打撃の神様」と称され、通算2351安打を放っている川上哲治は大正生まれであることが理由で、名球会には入っていません(野手としては唯一の事例だそうです)。
野球殿堂とは?
野球殿堂は、日本の野球の発展に大きな貢献した方々の功績を永久に讃え、顕彰するために1959年に創設されました。野球発祥の地である米国では、1939年に野球殿堂が創設され、日本の殿堂の20年先輩になります。「殿堂」とは英語では、”Hall of Fame”といわれ、直訳すると「名誉の殿堂」という意味になります。殿堂入りされた方々の表彰レリーフ(ブロンズ製胸像額)を、野球殿堂博物館内の殿堂ホールに掲額し、永久にその名誉を讃えます。 野球殿堂入りには競技者表彰と特別表彰があります。
プレーヤー表彰
対象者:現役を引退したプロ野球選手で、引退後5年以上経過した人。その後15年間が選考対象となる。
選出方法:野球報道に関して15年以上の経験を持つ委員(約300人)が投票。75%以上得票した人が殿堂入りとなる。
エキスパート表彰
対象者:①現役を引退したプロ野球のコーチ、監督で、引退後6ヶ月以上経過している人。
②現役を引退したプロ野球選手で、引退後21年以上経過した人。
選出方法:
殿堂入りした人(約30名)、競技者表彰委員会の幹事と野球報道年数30年以上の経験を持つ委員(約70名)が投票。75%以上得票した人が殿堂入りとなる。
特別表彰
対象者:
①現役を引退したアマチュア野球の競技者(選手、コーチ、監督)で、選手は引退後5年、コーチ、監督は引退後6ヶ月以上経過している人。
②プロ及びアマチュア野球の審判員で、引退後6ヶ月以上経過している人。
③プロ及びアマチュア野球の組織または管理に関して野球の発展に顕著な貢献をした人、しつつある人。
④日本の野球の普及及び発展に顕著な貢献をした人、しつつある人選出方法:
プロ野球の役員及び元役員、アマチュア野球の役員、野球関係学識経験者(14名)が投票。75%以上得票した人が殿堂入りとなる。
※公益財団法人野球殿堂博物館ホームページ「野球殿堂とは?」より引用
まとめると、プレーヤー部門では、「引退から20年以内で、かつ引退から5年以上が経過している者」、エキスパート部門では、「監督、コーチ、審判で引退後6ヶ月以上経過している者」、もしくは「プレーヤー部門の有資格者だった者で、引退後21年以上経過した者」が対象となり、「特別表彰」はアマチュアの方を対象に野球の発展に顕著な貢献をした人に与えられ、そのすべてが一定の基準をクリアしている記者による投票で選出されます。
名球会と野球殿堂の違い
二つの内容を見比べてみてわかったように、名球会には「入会するために必要な現役時代の記録」という明確な基準があり、野球殿堂は記者投票により名誉表彰という意味合いが強いようです。
野球殿堂は上記のような選出法であるがゆえ、「なぜこの選手は選ばれているのに彼は候補にも挙がってないんだ」といった類の賛否はこれまでにもいろいろあがっています。
個人的には、『ドカベン』『あぶさん』をはじめとする数多くの野球マンガを手がけてきた水島新司先生はぜひ野球殿堂入りしてもらいたいと思っています。
星野さんと平松さん
今回エキスパート部門で選出された星野仙一、平松政次の両氏はともに岡山出身。現役時代は巨人キラーとして鳴らした点も共通しています。さらにいうと、ドラフト前に巨人から指名の連絡を受けていたのにもかかわらず、結果的に指名されなかったというところも同じで、お二人ともそれが「打倒巨人」の原動力となったといわれてます。
ちなみに、平松さんは岡山東商業高校出身で、平松以前の大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)のエースだった秋山登投手も同校の出身です(他にも、土井淳、岡義朗、八木裕なども岡山東商業出身)。
平松さんと同学年で、ヤクルトのエースとして活躍した松岡弘も岡山出身で、こちらは星野さんと同じ倉敷商業高校出身。同年代(星野は二人の一学年上)で同郷の三人が、「打倒巨人」を目標にセリーグの各チームのエースとして活躍していたのも、なんだか面白いですね。
出身高校の話題が出たついでにいっておくと、平松さんは甲子園で優勝しています。甲子園優勝投手で、ピッチャーとして名球会入りしたのは現在のところ平松さんだけのようです(王貞治と柴田勲は打者として名球会入り)。
最後に、伊東監督ふくめ、今回の受賞、おめでとうございました。