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男性保育士に「女児の着替えさせないで!」と保護者が言ったというニュースについて。

 

今日のヤフーニュースに、男性保育士に「女児の着替えさせないで!」 保護者の主張は「男性差別」かという記事がアップされました。この問題について考えてみたいと思います。

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記事の概要

千葉市幼保運営課によると、「市内の公立幼稚園・保育園では、男性保育士が幼児のオムツ交換や着替えの業務を「外される」ケースが目立」っているとのとで、この事実を受け熊谷俊人市長(38)が「女性なら社会問題になる事案です」とツイートし、問題提起したそうです。

 

そもそも、千葉市では、(1)男女の性別に関わらず同じ業務を行えるようにする、(2)男性用のトイレや更衣室など環境面の整備を計画的に進めるといった、「男性保育士活躍推進プラン」を今年の1月18日に策定していたようです。

 

背景には、「昨今、女性の活躍を推進する施策は盛んに取り組まれています。一方で、女性が多数を占める職場での『男性の活躍推進』という点については、あまり重要視されていない部分がありました」という状況があり、それを踏まえ、男性保育士活躍推進プランが施行されたようです。

 

それを受け、記事のタイトルにもあったように、一部の女性から「男性保育士による女児の着替え」についてのツイートがあったようです。具体的には、

「男性保育士さんに警戒するのは仕方がないのではと思います」
「性犯罪の加害者の九割が男性って事を考えたら、充分考慮する理由になると思うんだけど」
「女児の親御さんが同性更衣介添えを望むのは当然の事かと思います」

といったもので、これに対して同市長が、

「娘を男性保育士に着替えさせたくないと言う人は、同様に息子を女性保育士に着替えさせるべきではないわけですが、そんな人は見たことがありません。社会が考慮するに足る理由無しに性による区別をすることは差別です」

と反論。

この件について取材に応じた男性保育士(40)が、現場実際に女性ユーザーが指摘したような声が上がっていることを認め、「性犯罪やロリータコンプレックスなどの報道もありますし、保護者の方が男性保育士に一抹の不安を感じてしまうのは仕方がないと思います」と理解を示す一方で、同じ保育士なのに男性だけが専門職と認められていないと感じることが多いと、不満ももらしています。

そして、彼が発した下のコメントで、記事が締めくくられています。

「男性の保育士は珍しいこともあり、運動会の準備などの力仕事は全て男性に任せるといった風潮がある職場も多いようです。でもこれって、女性に『お茶くみ』の仕事をさせていた一昔前の職場と同じですよね(笑)」

 

ある男性保育士のお話

この記事を読んだときに、昨年11月に取材をしたある男性保育士の話を思い出しました。彼(=仮のAさんとしておきます)は保育士として仕事をするとともに、教育系の某大学大学院に通っておられます。

 

多様化す家庭環境により、保育の現場でもさまざまな新しい問題が起こっているというAさん。これまでは経験を頼りに保護者対応などに取り組んできたが、それでは限界があると感じ、学究的な側面から論理的に解決策を探りたいと思ったことが、大学院進学のきっかけになったという。

 

「父親の子どもへのアタッチメント(愛情形成)」「子育てに取り組むお父さんの支援」というメインの研究テーマのほか、Aさんが取り組もうされていたのが「男性保育士の現状と課題」という問題でした。

 

実際に保育の現場で男性は圧倒的なマイノリティーのようで、その数は保育士全体の約3%だそうです(看護師に占める男性看護師の割合より低い)。そのなかでさまざまな問題もあるようで、、例えば男性専用のトイレや更衣室がないといった問題が現場ではよく見られるとのことでした。

 

先の千葉市の熊谷市長の発言ではありませんが、「トイレや更衣室がない」といったことは性別が逆だと大問題になっていることでしょう。Aさんは研究活動を通じて、そうしたこれまで当たり前とされてきたことを見直し、女性と同等に働ける文化をつくっていきたいとおっしゃっておられましたが、今回の記事でもまさに同じようなことが語られていました。


まとめ

実際に男性保育士、経営者の園児に対する性犯罪などが起こったりもしているので、一部の保護者が不安がるのもわからないではないかなと思います。

一方で、そんなことを言い出せば切りがないし(小学校、中学校などでも性別にかかわらず生徒を性的な対象として見ている職員も、実際に事件になっていることを思うとゼロではないでしょうし)、専門職として誇りを持ち、保育士として全力で仕事に取り組んでいる方がほとんどだということも思いますし、なかなか難しい問題ですね。

 

ただ、間違いなく言えるのは、男性保育士が職場内のマイノリティーとして専門職とみなされなかったり、肩身の狭いを思いをすることがあるというのは事実としてあるようで、だからこそ千葉市も「男性保育士活躍推進プラン」を立ち上げたし、Aさんもその改善をめざして研究に取り組んでいるわけです。

 

そういった意味では千葉市は先進的な取り組みにチャレンジしていると思うのですが、新しいことをすれば何かと軋轢が出てきて、今回のように問題が表面化することはよくあることです。現場だけでは解消できない場合、Aさんがそうだったように学研的な知見を活用したり、行政などとも連携しながらより良い方向性を探り、その先にあるものとして、「男性保育士」の地位の向上が実現していけばいいですね。そう簡単な問題ではないかもしれませんが。