大谷翔平選手がWBCの「侍ジャパン」代表入りを辞退を発表して1週間ちょっとたちますが、その是非について考えてみたいと思います。また、10日に新たなケガの情報も報道されました。気になるそのあたりのことについても見てみましょう。
画像元:野球日本代表 侍ジャパンオフィシャルサイト
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代表入り辞退は、何の問題もないように思う
選手の身体を最優先に
見出しに答えを書いてしましたが、個人的には何の問題もないと思うというか、むしろ無理して出場するのは積極的にやめてほしいくらいに思っていました。
別に大谷選手にかぎったことではありませんが、何よりも選手の身体が優先されるべきでしょう。
まして球界の至宝ともいわれ、今オフにはメジャー挑戦もひかえている大谷選手です。こんなところで無理をして、その結果ケガを悪化させ、先々まで引きずるなんてことになったら、そちらの方が一大事だと思います。
WBCの大会の価値
こういうことをいうと怒られそうですが、そもそもWBCという大会が、現状ではそこまで無理をして戦う大会ではないように思います。
もちろん、日本人の野球好きの一人として応援はするし、優勝してくれるとうれしいですけど、サッカーのワールドカップほどの力が入るかというと、そこまで熱を入れて応援するわけでもありません。
選手たちが所属するプロ球団もしかりで、特にメジャーリーグは顕著ですが、有力選手になればなるほど、大会への選手の参加には前向きにならないでしょう。
なので、「代表」といってもその国の最良メンバーが集結しているとはいいがたく(アジア勢は気合入ってる感じですが、やはりメジャー所属でバリバリやってる選手の出場はなかなか難しいようです)、その観点かも“大会の価値”としては最高峰とはいえないと思いますし、少なくともサッカーワールドカップのような位置づけにはなっていないと思います。
とはいえ、2009年のWBCの決勝戦で、イチローが決勝打を打ったシーンなんかはほんと感動しましたし、観てるとやっぱ楽しかったりもするのですが、選手がケガをおしてまで参加しなくてもいいとは思います。
日本ハム・工藤投手の悲劇
たとえば、1980年代初頭に活躍した工藤幹夫投手の場合。
って、30年以上前の選手の話なんで誰やねん?って話かもしれませんが、1982年のシーズン、工藤投手は20勝を上げ(4敗)、防御率も2.10という安定感を見せ、最多勝・最高勝率・ベストナインを獲得。チームのエースとして、まさに大車輪の活躍を見せます。
しかし、同シーズンの9月、右手小指を骨折。シーズン終了後に行われる西武とのプレーオフ出場は難しいと考えられていました(当時、パ・リーグは前期・後期制を採用し、前期優勝の西武と、後期優勝の日本ハムがプレーオフで戦い、勝ったチームが日本シリーズに進むという段取り)。
ところが、予想外の回復を見せ、医師から「間に合う」と連絡を受けた大沢監督がその情報を内密にし、プレーオフ第一戦にサプライズ登板させたわけですが、工藤投手は期待に応えて7回途中までを0点に抑えます(試合は、リリーフした江夏が打たれ、日本ハムは敗戦)。
2戦目も落とし、後がなくなった日ハムは、なんとエースの工藤投手を第三戦に先発させます。
しかも工藤投手はまたしてもその期待に応えて9回を1失点で完投、勝利投手となりますが、試合後の握手を利き手とは逆の左手で行うなど、右手のダメージは相当深刻なものになっていました。
このプレーオフの無理な登板がたたり、翌年工藤投手は右肩を痛め、その次の1984年をもってして現役引退ということになってしまいます。
で、長々と書いて何がいいたいねんというと、やっぱ無理はしたらあかんということで、「プレーオフ」とか「日本シリーズ」とかは確かにシーズン中とは違った特別感が出てしまいますし、よくも悪くも選手たちにはプレッシャーがかかると思いますが、だからといって無理をする必要はないし、ましてそれでケガを悪化させ、選手生命を棒に振ってしまってはなんにもなりません。
貴乃花の事例
アメトークの「相撲大好き芸人」で貴乃花の話もしてたのでその事例も出すと、小泉首相の「痛みに耐えてよくがんばった!」で有名な武蔵丸との優勝決定戦に強行出場し、貴乃花が優勝するシーン。
確かに感動的な場面ですが、この後貴乃花は1年間休場。復帰後、3場所で現役引退することになります。
貴乃花の場合、心技体を問われる相撲の世界で、横綱という地位もあるから、一概に否定はできないところもありますが、「ここで無理をしていなければ、どれほどの大横綱になっていたか」とついつい思ってしまうのもまた事実です。
まして、野球などの団体競技において、たとえそれがどれほどの大舞台であろうとも、選手生命をおびやかすようなケガをおして強行出場する必要性はまったくないでしょう(上記の工藤投手のように、それで選手生命が絶たれれば本人にとっても大ダメージですが、それが中心選手であればあるほど、結果的にチームメイトや球団にも迷惑をかけてしまうことになり、誰も得をすることがありません)
えてしてこういう強行出場は美談になりがちですが、瞬間的にそういった叙情性に流される気持ちもわからなくもないですが(貴乃花のエピソードがいい例ですね)、やっぱり本人とっても、ファンにとっても、その選手の最良のパフォーマンスを長く見られることが何より幸せなことなんだと思います。
中田翔のコメント
大谷翔平と大の仲良しで、チームメイトでもある中田翔選手は以下のように語っています。
「僕自身、悲しいというか、翔平も活躍してやろうという気持ちが強かったと思います。ただ、チームメートの立場としたら、無理しないで、って言いたくなる。他のチームの選手だったら、『無理してでも投げろ』と言いますけど(笑い)。代わりに投げてくれる選手のために打撃でカバーしたいですね」
「足首は僕も関節がゆるくて、くじいたりとか結構あった。周りの人が思っている以上に本当に長引くんですよ。だから今はシーズンだけ見据えて早く治して欲しい。アイツがいなかったら、投げる方も打つ方も大穴ができますから。まあ、無理をしなくても、翔平ならこれからまだまだこういう国際大会の機会もあると思うし、のんびりやってもらいたいですね」
※日刊ゲンダイDIGITALより引用
「他のチームの選手だったら、『無理してでも投げろ』」は冗談っぽいコメントだと思いますが、やっぱり普通こういった感じの思いになりますよね。
気になる大谷選手のケガの状態は?
大谷のケガの状態から、専門家は「有痛性三角骨障害」と見ているようです。
「有痛性三角骨障害」とは?
足首の距骨(きょこつ)という骨の後方にあります。すべての人にあるわけではなく、一定割合の人にしかありません。過剰骨と呼ばれたりもします。距骨の後側には、外側と内側に結節と呼ばれる隆起があります。一般的に外側の方が隆起が大きいのですが、通常は小学生の頃に距骨本体とくっつき一体化します。何らかの原因で癒合しないままになる場合があります。癒合しなかった状態が三角骨となり、その三角骨付近が痛むことが、有痛性三角骨障害と呼ばれます
引用元:Full-Count 鍼灸整骨院・新盛淳司院長の解説コメントより
耳慣れない病名ですが、足首を急激にひねるなど、大きな負荷が一度にかかったとき、もしくは連続的な足首への過度な負荷によるオーバーユースによる痛みと、二種類の発症パターンがあるとのこと。
大谷選手の場合、昨年の日本シリーズで痛めたとされていますが、その後も休むことなく試合に出続けたことが、症状を悪化させたと考えられているようです。
休めても痛みがひかない場合、手術という方法も考えられるようですが、今後の動向が気になるところです。
最新情報
現在、沖縄・名護でキャンプ中の大谷選手。
今はキャッチボールや軽いランニングが中心で、「変にあわてず、ちゃんとやれ、と言ってある。今月はバットを一回も振らなくても間に合うのだから」と栗山監督。
とにかく無理をさせない姿勢には共感しますが、思ってたよりひどい状態だったなんて事態にならないことを祈っています。
なんだったら開幕にも間に合わなくていいので、完治をめざしてもらえればと思います。