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オグリキャップを特集。NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』の感想まとめ。

特別企画として2月13日に放送されたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の特集は競走馬・オグリキャップ。

なぜ、番組の内容を振り返るとともに、本当に「二流の血統」だったのかということを中心に、特集の中身を考察してみます。

画像元:プロフェッショナル 仕事の流儀HP

 

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オグリキャップ・プロフィール

生年月日1985年3月27日

調教師 瀬戸口勉 (栗東)

馬主 近藤俊典

生産者 稲葉不奈男

産地 三石町

中央獲得賞金 88,830.0万円

地方獲得賞金 2,281.0万円

通算成績 32戦22勝 [22-6-1-3]

主な勝鞍 90’有馬記念(G1)

※調教師、オーナーは最終の担当・権利者。







「“二流”の血統だった」は本当か?

番組でも紹介されていましたが、競馬は「ブラッドスポーツ」ともいわれ、何よりも血統が重視されます。

その次代に引き継ぐべき「血」を取捨選択するために設けられたのがダービーをはじめとするクラシックレースであり、その受け継がれるべき「血」を探すために、競走馬たちは走らされているという見方もできます。

そんな血統が重視される競馬の世界で、オグリキャップは番組で紹介されたように“二流の血統”でした。

父ダンシングキャップについて

父ダンシングキャップはアメリカで生まれ、イギリス、フランスで競走馬として現役生活を送り、引退後に種牡馬として日本に輸出されました。

競争成績は凡庸といっていいもので、通常なら種牡馬になれない感じですが、たまたまイギリスで同馬を見た日本の生産者の稗田実氏が一目ぼれし、日本への導入を決めたそうです。

 

種牡馬としてのダンシングキャップの特徴はダートに強く、その産駒の多くは、ダートを主戦とする地方競馬で活躍。特別大物を輩出することもなく、種牡馬としては「二線級」という評価でした。

 

その父は偉大な競走馬であったネイティブダンサー。

同馬は種牡馬としても成功を収め、レイズアネイティヴ、エタン、ダンキューピッドなどの産駒を輩出しました。

 

特にレイズアネイティブはミスタープロスペクターという競走馬を生み、その後「ミスタープロスペクター系」と呼ばれる一代系統を生み出すなど、世界的に大きな影響力を持つ血統となっています。

(日本だと、キングカメハメハなどがその系統になります)







孫世代で爆発するネイティブダンサーの血

ミスタープロスペクターは20世紀、もっとも成功した系統と謳われるくらい、種牡馬として大成功します。

(ちなみに、競争成績は悪くはありませんが、G1勝ちがないどころか重賞レースも勝っておらず、種牡馬成績から比べると、甚だしく大したことがないといえます)

 

挙げればきりがありませんが、ミスワキ、ウッドマン、アフリート、シーキングザゴールド、フォーティーナイナー、マキャベリアン、キングマンボ、スマートストライクなど、数多の活躍馬を出し、それぞれが種牡馬としても成功を収め、一大系統を築き上げ、それは現代に至るまで大きな影響力を持っています。

 

で、何かが言いたいのかといいますと、このミスタープロスペクターの例に顕著ですが、ネイティブダンサーの血は孫世代で爆発するということです。

競馬の世界は大活躍した兄とまったく同じ配合をしても未勝利で終わったなんてことがよくあるもので、何事も一概にはいえないのですが、ミスタープロスペクター以外の孫世代の繁殖大成功例でいうと、ネイティブダンサーの仔のナタルマは、同じく世界中で大成功を収めるノーザンダンサーの母となっています(このことから、現代の競走馬のほとんどにネイティブダンサーの血が入っていることになります)。

そのほか、ダンキューピッドはシーバードを、エタンはシャーペンアップを出すなど、孫世代に爆発しています。

 

ひるがえってダンシングキャップですが、立場的にはミスタープロスペクターと同様、ネイティブダンサーの孫です。

孫世代で爆発するネイティブダンサーの血を考えたら、そこから突然変異的に怪物のような馬が産まれてくる可能性がゼロとはいえないわけです(それ言い出すと、どんな配合でも突然変異の活躍馬が産まれる可能性はゼロでないって話になりますが、実証的なネイティブダンサーの傾向として、そういったことが言えると思います)







母ホワイトナルビーについて

父シルバーシャーク、母ネヴァーナルビー(その父ネヴァービート)で、現役時代の競争成績(地方で8戦4勝)とあわせ、血統もめだったものがあるわけではありません。

 

ただ、繁殖成績はすばらしく、第6仔となるオグリキャップが産まれるまでの兄姉はすべて勝ち上がり、その5頭の勝利数は実に42勝を数えました。

地方競馬での成績ですが、これは特質した数字です。

 

それ以降の子どもたちも大活躍し、

競走馬となった15頭の産駒はオグリメーカーとオグリビート以外はすべて違う父親で勝ち上がり、その総勝利数は133という驚異的な繁殖成績を残した。

※wikipediaより引用

と、びっくりするくらいの成績を収めています。

 

いや、それ地方競馬の話でしょというつっこみに対しては、オグリキャップの妹オグリローマンがJRAの桜花賞を勝利。兄オグリキャップに続いて、中央のG1をゲットします。

 

これらのことからも明白ですが、オグリキャップの母ホワイトナルビーは繁殖牝馬として恐ろしく優秀でした。

血統が地味だったり、現役時代は未勝利だったりした繁殖牝馬が活躍馬を産むというのは世界的に見てもよくあることで、現役時代はダメ、もしくは普通=二流ということは、繁殖牝馬に関しては当てはまりません。

 

つまり、名馬オグリキャップ誕生にはそれなりの必然性があったということで、すなわち繁殖牝馬として優秀であった母ホワイトナルビーに、孫の世代で爆発する祖父ネイティブダンサーの血が交わり、それがみごとにヒットしたという推察です。

 

結果論的にそういうことがいえるという見方もできますが、なぜこんなに活躍したのか、その理由を検証すれば、上記のような推察も理由のひとつの可能性として挙げられると思います(少なくとも、兄弟全馬が未勝利で、その中で突然怪物が現れたとかではありませんし、何の手がかりもない突然変異とまではいえないと思います)

強さの秘密

番組でも言及されていましたが、やはり心肺機能の強さは別格だったんじゃないでしょうか。

それが高い運動機能とともに、ハードな日程でレースをこなせるタフな肉体にもつながっているように思います。

 

一口馬主をやっているとよくわかりますが、馬の個性にもよりますが一レースするとけっこう大きなダメージがあり、仮にレースを勝っても連戦は難しいから、いったん放牧、なんてこともよくあります。

なので、続けてレースを使えるだけでも競走馬として大きなアドバンテージがあり、特にオグリキャップの場合そのオン/オフの切り替えが抜群に上手く、それがタフなフィジカルにもつながっていたようですね。

 

ただ、そのタフネスぶりがあだともなり、今からはもちろん、当時でもちょっと考えられないハードなローテンションでオグリキャップはレースに出走させられます(ここらあたりは、オーナーサイドのお金にまつわる話も大いにかかわっていて、当時、ファンやマスコミにも批判されました。番組ではふれられていませんでしたが)。

 

たとえば、89年の秋シーズン、オールカマー(G3・1着)、毎日王冠(G2・1着)、天皇賞秋(G1・2着)と使って、その後マイルチャンピオンシップ(G1・1着)に行き、語り継がれるバンブーメモリーとの叩きあいをハナ差制したあと、まさかの連投でジャパンカップ(G1)に出走。

ここでも激走をみせ、世界レコードで走った1着ホーリックスの着差なしの2着に。シーズンの最後に有馬記念に出るけど、さすがに無茶使いがたたったのか5着に敗れています。

 

番組だけを観ていると、翌年に施され「た疲れを癒すための温泉療養」がスランプのきっかけみたいな印象を与えますが、仮に温泉療養が直接のきっかけだったとしても、何よりも前年の無茶なローテンションが少なからずオグリキャップにダメージを与えていたと思います。







引退レースで奇跡の復活

ラストランとなった90年の有馬記念は何度観ても感動しますね。

今回の番組でもフジテレビの映像が使われてましたが、このレースはやっぱ大川慶次郎さんの「ライアン! ライアン!」が聞けるフジテレビの実況がいいです。

オグリの感動のラストランのゴール前で、競馬の神様のまさかの「ライアン」連呼で、その意味でも伝説のレースとなったこの年の有馬記念。

ちなみに、大川さんがライアンを連呼するにいたった裏話というか、そこにいきつくまでのストーリーもあるのですが、長くなるのでここでは割愛させていただきます(また機会がありましたら)

 

実況を担当していたのは大川和彦アナで、「右手を上げた武豊!」と叫んでいますが、武豊が上げているのは左手で、それくらい興奮していたわけですが、一部では大川さんの「ライアン!」に動揺させられたという説も流されています。

 

ちなみに、上の画像はフジじゃないのでW大川の実況・解説ではありません。

フジバージョンのダイジェストはこちら。

まとめ

一競馬ファンとして放映されたのは普通にうれしかったのですが、なぜ今この時期にオグリキャップを取り上げたのかな?とは思いました。

 

あと、一応「特別企画」とは銘打ってるけど、やっぱ馬が主役はちょっと無理あるんじゃないでしょうか(調教師とか騎手じゃなくて)。

ラストに毎回聞かれる「プロフェッショナルとは?」の質問もなかったですしね。笑







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